2012/11/06

冬の足音

「秋すっ飛ばして冬もう来ちゃったよ!」

「むしろ毎年こんなんじゃねー?」

「てか冬だと朝練まじだりーよな!てか寒くて起きれないし!だいたい俺たちみたいなのが朝練する必要あんのかよ!まったくー。」

「でも冬って逆にテンション上がるよな!冬でも半袖のヤツいたじゃん!」

「いたいたー!!」

そういって俺たちは二人で着ていた制服を脱ぎ捨てながら、誰もいないはずの更衣室に入ると、そこには見なれないジャージを着た一人の小柄な女の子がぽつんと座っていた。

「え?あ!!す、すいません・・・」

「て、ていうか誰?!んでここ男子更衣室だよ!!女子はあっち!!」

俺たちはその女の子の顔や姿をなるべく見ないようにして叫んだ。

女の子は
「あ、す、すいません、、、昨日転校して来たばかりだから何もわからなくて、、、」

そう俺たちに言ってそそくさと更衣室を出て行った。

期待というか、緊張というか、なんとも言えない空気のまま俺たちは着替えてグラウンドに出た。

顧問の先生が、さっきの女の子を連れて来て言った。

みんな、紹介する。今日からこの陸上部に入ることになった木暮ゆきのさんだ。

「はじめまして、木暮です。このジャージ、前の学校ので、新しいのはまだ届いてないのでしばらくこの格好で部活します!逆に覚えやすくていいかな?なんて思ってます!よろしくお願いします。」

意外とハキハキした口調で自己紹介を終えた彼女を、俺はただただボーッと見ていた。

なんだか気になってしまうのは、転校生だからだろう。

そう自分に言い聞かせてダラダラとグラウンドを走り始める。

冬が、始まろうとしていた。

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